
ビジネスシーンでもよく使われる「俯瞰(ふかん)」という言葉、正しく使えていますか。「木を見て森を見ず」ということわざがありますが、ビジネスではまさに森全体を見る、俯瞰的な視点が欠かせません。
この記事では、「俯瞰」の意味やビジネスシーンでの使い方を、具体的な例文を交えて解説します。また、言い換え表現や「俯瞰して見る」など意味が重複する表現に注意する使う際の注意点もご紹介します。
「俯瞰」とは
「俯瞰」の「俯」は「うつむく、下を向く」、「瞰」は「見下ろす」という意味を持つ漢字です。このため「俯瞰」は、高い場所から景色を見下ろすことを指し、物事全体を広く見渡し、本質や全体像を捉えることを意味します。
また個別の情報にとらわれず、まるで上空から眺めるように、広い視野で物事の全体像を客観的に把握する、捉えるという比喩的な意味合いもあります。ある問題の根本原因を突き止めたり、プロジェクト全体を客観的に見極めたりする際に、とても重要な考え方とされています。
「俯瞰」を使うときの注意点
「俯瞰」という言葉は、ビジネスシーンでとても便利ですが、使い方を間違えると誤解を招くことがあります。正しく使うためのポイントを3つご紹介します。
1: 意味が重複する表現に注意する
「俯瞰」には「高いところから見下ろす」という意味が含まれています。そのため「俯瞰して見る」「上から俯瞰する」「俯瞰的に見る」といった表現は、意味が重複していて不自然です。
2: 「俯瞰」の本来の意味も意識する
ビジネスで使う「俯瞰」は、「客観的に全体を見る」という比喩的な意味がほとんどです。しかし、この言葉の根底には「高い視点」というニュアンスがあります。単に「全体を見る」だけでなく「一段高い場所から、冷静に、客観的に」と言葉の背景にあるニュアンスを理解することで、より深い意味を伝えることができます。
3: 相手に具体的な行動を促す
「俯瞰してほしい」と伝えるだけでは、相手は具体的に何をすれば良いかわからないことがあります。「俯瞰した結果、何をしてほしいのか」を明確に伝えましょう。「市場全体を俯瞰し、新しい顧客層を開拓する戦略を練ってほしい」や「この企画書の全体像を俯瞰して、改善点をいくつか提案してほしい」など、具体的な行動を付け加えることで、指示が明確になり、よりスムーズに仕事が進められます。
ビジネスシーンでの使い方・例文
ビジネスにおける「俯瞰」は「物事全体を広く見渡すこと」を意味します。細部や個別の問題にこだわりすぎず、まるで高いところから見下ろすように、全体の状況や関係性を客観的に捉えるときに使います。この視点を持つことで、根本的な問題点や新しい可能性が見えてきます。
戦略や計画を立てる場面
新たなプロジェクトや戦略を考えるとき、個々のタスクだけでなく、その先の目標や市場全体を視野に入れる必要があります。
〈 例文 〉
□ 新規事業を成功させるには、まず競合の動向や顧客ニーズを俯瞰して
全体像を把握することが重要です。
□ プロジェクトマネージャーとして、個々のタスクの進捗だけでなく
チーム全体の状況を常に俯瞰するように心がけています。
問題解決や意思決定の場面
目の前の課題に直面したとき、その一点だけを見てしまうと、かえって解決が遠のくことがあります。一歩引いて全体を眺めることで、最適な解決策が見つかります。
〈 例文 〉
□ 顧客からのクレームを分析する際は、個別の事象だけでなく
一連のプロセス全体を俯瞰することで根本的な原因が見えてきます。
□ チームのパフォーマンスが低下している原因を突き止めるため
各メンバーの役割やコミュニケーションの流れを俯瞰して分析する必要があります。
個人の能力や姿勢を示す場面
「俯瞰」は、広い視野や客観的な視点を持っていることを示す言葉としても使われます。「俯瞰力」や「俯瞰的視点」といった表現も一般的です。
〈 例文 〉
□ 優れたリーダーには、個人の感情に流されず、状況全体を俯瞰して冷静に判断する力が求められます。
□ 自分の業務だけでなく、隣の部署の仕事内容まで俯瞰して理解することで
より円滑に連携できるようになります。
「俯瞰」の言い換え表現
「俯瞰」の言い換え表現はいくつかありますが、それぞれ少しずつニュアンスが異なります。状況や伝えたい内容に合わせて使い分けることで、より的確なコミュニケーションが可能になります。
鳥瞰(ちょうかん)
鳥瞰は、文字通り鳥が空から見下ろすように、物事を広範囲に見渡すことを意味します。
視覚的な広がりや全体像を捉えるニュアンスが強く、地図やデータなど、視覚情報と合わせて説明する際に適しています。
〈 例文 〉
□ 業界全体の流れを鳥瞰し、来期のマーケティング戦略を立案します。
□ 膨大なデータを鳥瞰することで、新たな市場の可能性が見えてきます。
大局的(たいきょくてき)
「大局的」は、細かい部分にとらわれず、物事の全体的な流れや将来を見通すことを意味します。
刻々と変化する状況や、長期的な視点が求められる場面で有効です。
〈 例文 〉
□ 目先の売上だけでなく、大局的な視点で長期的な顧客関係を構築するべきです。
□ 困難な状況でも、大局的に考えれば、最善の解決策が見つかるはずです。
包括的(ほうかつてき)
「包括的」は、全体を一つにまとめ、すべてを含めることを意味します。
「高いところから見下ろす」というニュアンスはなく、物事を網羅的にカバーしていることを強調したいときに使います。
〈 例文 〉
□ 新規事業のリスクを洗い出すために、包括的な市場調査を実施しました。
□ 新しいシステムの導入にあたり、関連部署全体を包括的にサポートする体制を整えます。
全体像を把握する
「全体像を把握する」は、「俯瞰」をより平易でわかりやすい言葉に言い換えた表現です。
専門的な言葉を避けたい場面や、相手にシンプルに伝えたいときに適しています。
〈 例文 〉
□ プロジェクトの成功には、メンバー全員が全体像を把握することが不可欠です。
□ 顧客の真のニーズを理解するため、ヒアリングを通じて全体像を把握する必要があります。
「俯瞰」の意味やビジネスシーンでの使い方、言い換え表現や注意点をご紹介しました。俯瞰という言葉の使い方とあわせて、「俯瞰の視点」についても、しっかり確認していきましょう。
ビジネスにおいて、物事を高い視点から全体的に見渡す「俯瞰の視点」は、ベテランになるほど重要性が増し組織全体の成果向上にも貢献します。目の前のタスクや個別の問題に囚われず、まるで上空から眺めるように、冷静に全体像を把握することで、本質的な課題や新たな可能性を見出すことができます。また会議やプレゼンで俯瞰の重要性を共有すれば、チーム全体の視野が広がり、より良い意思決定につながります。
他の人の意見を聞いて多角的な視点を取り入れたり、結果を振り返って分析したりすることで、俯瞰の視点は養われます。「俯瞰の視点」は、プロジェクトや組織を円滑に進めるために、さまざまな場面で役立ちます。積極的に取り入れてみましょう。