「大丈夫です」はビジネスシーンで何という?

「大丈夫です」という表現は、さまざまなシーンで使う言葉ですが、敬語ではありません。そのため、ビジネスシーンにおいて正しい言葉遣いとはいえません。「大丈夫」の意味や、シーンごとの言い換え表現などについて解説します。

「大丈夫」の意味

「大丈夫」には、以下のように複数の意味があります。


1:[名]⇒だいじょうふ(大丈夫)《「だいじょうぶ」とも》りっぱな男子。ますらお。偉丈夫。「豪放な—」

2:[形動][文][ナリ]
  1 あぶなげがなく安心できるさま。強くてしっかりしているさま。
  「地震にも—なようにできている」「食べても—ですか」「病人はもう—だ」
  2 まちがいがなくて確かなさま。「時間は—ですか」「—だ、今度はうまくいくよ」
[補説]
近年、形容動詞の「大丈夫」を、必要または不要、可または不可、諾または否の意で相手に問いかける、あるいは答える用法が増えている。「重そうですね、持ちましょうか」「いえ、大丈夫です(不要の意)」、「試着したいのですが大丈夫ですか」「はい、大丈夫です(可能、または承諾の意)」など。

3:[副]まちがいなく。確かに。「—約束は忘れないよ」

goo辞書 より引用


もともと「大丈夫」は仏教由来の言葉であり、現代では1番目の名詞の意味に関係しています。ビジネスシーンでは、2番目の形容動詞として使う場合が多く、近年では補説のとおり、本来の言葉の意味と異なる意味でも使われるようになっています。


「大丈夫」の本来の意味と異なる意味

本来の言葉の意味と異なる意味は、大きくわけて3つあります。


● 肯定・可能・了承・承諾・賛成の意味の「大丈夫」

目上の人や取引先との会話の中で、相手の意見や依頼、質問に対して、肯定や賛成の意味で「大丈夫」と答えることがあります。 「大丈夫」の本来の意味「間違いがない」という意味から派生した使い方で、よく使われている表現です。


● 否定・不要・断る意味の「大丈夫」

「大丈夫」の本来の意味からはずれた使い方ですが、日常会話で多用されています。失礼のないようにはっきりと断れない理由で、不要・否定・断るときに「大丈夫」を使うケースが多いようですが、肯定の意味と否定の意味でも使われるようになっているため、結果的に曖昧な返答になってしまい相手との間に齟齬が生じる可能性があります。


● 配慮・気づかいの意味の「大丈夫」

心配や謝罪を割いた際に相手を思いやる気持ちから、「気にしないで」などという配慮・気づかいの意味で「大丈夫」と答えることがあります。 「大丈夫」の本来の意味「安心である」という意味から派生した使い方です。

「大丈夫です」は敬語ではない

「大丈夫です」には、語尾に「です」がついているので敬語のように見えますが、敬語ではありません。ビジネスシーンで使う言葉として適切ではありませんので、使わないようにしましょう。「大丈夫」の意味別に、それぞれの敬語の言い換え表現をご紹介します。

● 肯定・可能・了承・承諾・賛成の意味の「大丈夫」

– 問題ございません / 問題ありません
– 承知いたしました
– かしこまりました
– 対応いたします


「大丈夫です」が口癖になってしまっている場合は、さまざまな言い換え表現を使うようにしましょう。「〇〇〇の件、大丈夫ですか?」などの質問につられて、思わず「大丈夫です」と返答しないように、しっかり「問題ございません」と安心してもらえる返答ができるように意識しましょう。


● 否定・不要・断る意味の「大丈夫」

– 必要ございません / 必要ありません
– 遠慮します
– 見送らせていただきます
– お断りいたします
– できかねます
– 対応いたしかねます


はっきり断ると申し訳ないという思いから「大丈夫です」と答えたくなりますが、誤解を生まないようにわかりやすく断りの意思を伝えることが大切です。否定の意味として「大丈夫です」の答え方はしないようにしましょう。「必要ございません」など短い言葉だけでは素気ない感じがする場合は、自分の気持ちもプラスし「大変うれしいのですが」や「大変申し訳ありませんが」などの前置きをしたりするといいでしょう。


● 配慮・気づかいの意味の「大丈夫」

– お気になさらないでください
– 問題ございません / 問題ありません
– おかげさまでよくなりました


「大丈夫です」は、突き放すような印象を与えてしまうこともありますので、使わないようにしましょう。心配してもらった際は「お気遣いに感謝申し上げます。どうぞお気になさらないでください。」など、お礼や感謝の気持ちをプラスするとよいでしょう。



「大丈夫」は、さまざまな意味があり肯定と否定の両方の意味でも使われるため、場合によっては曖昧な表現になり意思が伝わらない可能性があります。ビジネスシーンでは「大丈夫」の使用は控えた方がよいでしょう。

また「大丈夫です」は敬語ではありませんので使用せずに、状況にあった敬語の言い換え表現を使い分けて、円滑なコミュニケーションがとれるように心がけましょう。「結構です」という言葉も「大丈夫」と同じく、肯定と否定の両方の意味があり齟齬が生じる可能性が高いため、ビジネスシーンでの使用は控えた方がいい言葉です。

ビジネスシーンでは言葉遣いで印象が大きく変わるといっても過言ではありません。とっさのときにも、自然と正しい敬語が話せるように、日頃から正しい敬語を意識して使い続けることが大切です。



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