「忌憚のない」とは?意味や使い方、ビジネスシーンでの適切な表現を解説

会議や打ち合わせといった意見交換の場で、「忌憚のない」という言葉が使われることがあります。アンケートなどの文書で見かけることもあり、なんとなく「遠慮なく」という意味だと分かっていても、もし誤った使い方をしてしまったら…と自信が持てないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では「忌憚のない」の意味やビジネスシーンで使う具体的な方法、注意ポイントや言い換え表現などについて、例文もあわせてご紹介します。

「忌憚のない」の意味

「忌憚のない」は「きたんのない」と読み、相手に対して「遠慮しないでほしい」という気持ちを伝える際に使われる言葉です。

この言葉に含まれる「忌憚」には、もともと「気を遣って遠慮する」や「いみはばかる」といった意味があります。そこに打ち消しの「ない」を組み合わせることで、「遠慮をしない」や「気兼ねをしない」という意味合いになります。そのため、基本的には「忌憚のない」「忌憚なく」といった否定の形をセットにして、相手に率直な本音を求めている姿勢を示すときに活用されます。


「忌憚のない」の使い方

ビジネスの場では、建前ではなく本音での議論が必要な場面が多くあります。そのようなときに「忌憚のない」という言葉を添えることで、相手の心理的なハードルを下げ、率直な意見や評価を引き出しやすくすることができます。

主な活用シーンとしては、会議や打ち合わせの冒頭で参加者に発言を促すときや、プロジェクトの改善点を知るためにフィードバックを求めるとき、あるいはアンケートを通じて正直な声を募るときなどが挙げられます。

1. 相手に意見やアドバイスを求めるとき

会議や打ち合わせの場で改善案を仰ぎたいときに、本音で話してほしいという願いを込めて使用します。
〈 例文 〉
 □ 皆さまの忌憚のないご意見をお聞かせください。
 □ より良い成果を目指したく、進捗について忌憚のないフィードバックを頂ければ幸いです。

2. 自分の意見を正直に伝えたいとき

相手から「率直に言ってほしい」と求められた際に、失礼を承知で本心を伝えるクッション言葉として活用します。
〈 例文 〉
 □ 大変恐縮ではございますが、本件について私なりの忌憚のない意見を申し上げます。
 □ 今後の改善のために、差し支えなければ忌憚なく私の考えをお伝えしてもよろしいでしょうか。

3. 活発な議論やコミュニケーションを促すとき

話しやすい雰囲気を作りたいときや、要望を遠慮なく伝えてほしいときに添える表現です。
〈 例文 〉
 □ 本日は、皆さまと忌憚のない意見交換ができる貴重な場となれば幸いです。
 □ ご不明な点や気になることがございましたら、どうぞ忌憚なくお申し付けください。


「忌憚のない」を使う際の注意点

「忌憚のない」という言葉は、スムーズな意見交換を助けてくれる便利な表現ですが、ビジネスシーンで活用する際にはいくつか気をつけておきたいポイントがあります。相手との良好な関係を保つために、以下のポイントに注意しましょう。

1. 目上の方への使い方に配慮する

「忌憚のない」という言葉自体は敬語ではありません。また、本来「遠慮しないでほしい」と目下の人に対して使うニュアンスを含んでいるため、目上の方に対して直接使うのは避けたほうが安心です。もし上司や取引先の方に率直な意見を伺いたい場合は、「率直なご意見をうかがえますでしょうか」や「お気付きの点がございましたら、ぜひご指導ください」といった、より敬意の伝わる丁寧な表現に言い換えるのがスマートです。

2. 否定的な意見ばかりにならないよう意識する

相手から「忌憚のない意見を」と求められた際、正直に伝えようとするあまり、否定的な内容ばかりになってしまうことがあります。しかし、あまりに厳しい指摘が続くと、相手を傷つけたり関係を損ねたりする恐れがあります。意見を伝えるときは、良い点と改善点の両方に触れるなど、相手の立場に立った建設的な伝え方を心がけることが大切です。

3. クッション言葉を添えて印象を和らげる

率直な意見を述べる前には、相手への敬意を示す「クッション言葉」を添えるのがマナーです。「大変恐縮ではございますが」や「僭越(せんえつ)ながら」といった一言を添えるだけで、後に続く言葉の鋭さが和らぎ、相手に受け入れてもらいやすくなります。あくまで相手を尊重しているという気持ちを形に表すことが、円滑なコミュニケーションの秘訣です。

4. 常に否定の形で使用する

「忌憚」は基本的に打ち消しの言葉とセットで使われます。「忌憚のない」や「忌憚なく」という形が正しい使い方であり、「忌憚のある」といった肯定の形で使われることはありません。不自然な印象を与えないよう、決まったフレーズとして覚えておくと安心です。

5. 感謝の気持ちを忘れずに伝える

もし自分から「忌憚のない意見」をお願いし、相手が勇気を持って本音を話してくれたなら、その姿勢に対してしっかりと感謝を伝えましょう。その際、返答に「忌憚のない」という言葉を繰り返すのではなく、「貴重なご意見をありがとうございます」や「率直に仰っていただき感謝いたします」とお伝えすると、より丁寧でプロフェッショナルな印象になります。


「忌憚のない」の言い換え表現

「忌憚のない」という言葉は、使う相手やシチュエーションによっては少し堅苦しく感じられたり、目上の方に対しては不自然になったりすることがあります。柔軟に使い分けられるよう言い換え表現をまとめました。

1. 率直

「ありのままで隠すところがない」という意味を持つ、非常に使いやすい言葉です。柔らかい印象を与えつつ、本音を聞きたいという意図がしっかり伝わります。目上の方に対しても使いやすく、ビジネス全般で活躍します。
〈 例文 〉
 □ プロジェクトの改善案について、ぜひ率直なご意見をうかがえますでしょうか。
 □ 本日の会議では、日頃から感じている課題を率直にお伝えしたく存じます。

2. 遠慮なく

周りに気を遣って言葉を控えることをしない、という意味です。「忌憚のない」をより日常的な言葉にした表現で、書き言葉でも話し言葉でも使われます。目上の方へは「ご遠慮なく」とすることで、より丁寧な印象になります。
〈 例文 〉
 □ ご不明な点やご不安なことがございましたら、どうぞご遠慮なくお申し付けください。
 □ 資料の内容に修正が必要な箇所があれば、遠慮なくご指摘をいただけますか。

3. 気兼ねなく

「相手に対して過度に気を遣わない」という、心理的なハードルを下げるニュアンスが含まれます。相手をリラックスさせたいときや、より話しやすい雰囲気を作りたいときにぴったりの言葉です。
〈 例文 〉
 □ どのような些細なことでも構いませんので、お気兼ねなくお話しくださいませ。
 □ 今後のスケジュールについてご要望があれば、いつでも気兼ねなくご相談ください。

4. ざっくばらん

もったいぶらず、ありのままの心情を出す様子を表します。親しみやすい表現ですが、少しカジュアルな印象になるため、主に同僚や気心の知れた相手との打ち合わせ、あるいはアイデア出しの場などで使われます。
〈 例文 〉
 □ 本日のミーティングは、皆さまとざっくばらんな意見交換をしたいと考えております。
 □ 新サービスの企画について、まずはざっくばらんな感想を聞かせていただけますか。

5. 歯に衣着せず

思ったことを包み隠さず、はっきりと正直に伝えることを意味します。信念を持って率直に発言する様子を指し、良い意味で使われることが多いですが、状況によっては相手を傷つけてしまう恐れもあるため、使い方には少し注意が必要です。
〈 例文 〉
□ 部長はいつも歯に衣着せぬご指導をくださるので、私自身の成長に繋がっております。
□ 歯に衣着せぬ意見交換をすることで、プロジェクトの弱点が明確になりました。





「忌憚のない」という言葉は、ビジネスシーンにおいて、建前ではない本音の議論を交わし、より良い成果を生み出すための大切なきっかけとなります。

会議やフィードバックの場でこの一言を添えることで、相手が安心して発言できる雰囲気を作ることができ、活発な意見交換を促す一助となるでしょう。 ただし、率直さを大切にするあまり、相手への配慮を忘れてしまっては本末転倒です。

状況に応じて言い換え表現を選んだり、クッション言葉を活用したりして、相手を尊重する気持ちを忘れないようにしましょう。言葉遣いを少し工夫するだけで、周囲との信頼関係はより深まり、円滑なコミュニケーションへとつながっていくことでしょう。



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