
「よろしくお伝えください」は、ビジネスや日常会話で頻繁に使われる便利な表現です。しかし、その場のいない第三者への伝言を依頼する際に使う言葉のため、使う相手や状況を間違えると失礼にあたる可能性もあります。本記事では、「よろしくお伝えください」の正しい意味や適切な使い方、目上の人への配慮について、言い換え表現を例文を交えて詳しく解説します。
「よろしくお伝えください」の意味
「よろしくお伝えください」は、その場にいない第三者に、自分の気持ちや気遣い、伝言などを丁寧に伝えるための言葉です。主に、別れ際の挨拶やメールなどで使われる便利な表現です。
「よろしく」には「ほどよく」「適当に」といったニュアンスが含まれており、「どうか良いように計らって伝えてください」という敬意や、相手との心の距離を縮める親しみのニュアンスが含まれています。単に「伝えてください」と言うよりも、より柔らかく、温かい気持ちを込めて伝言を依頼できるのが特徴です。ビジネスシーンではもちろん、プライベートでも幅広く活用できます。
「よろしくお伝えください」の使い方
「よろしくお伝えください」は、ビジネスシーンで非常に便利なフレーズです。その場にいない第三者へメッセージを託す際に状況に応じて、さまざまな気持ちを伝えることができます。主に以下の3つの場面で活用できます。
●感謝の気持ちを伝える場合
直接会えない方へのお礼や、感謝を伝えたい時に使います。相手との良好な関係を築く上でも有効です。
〈 例文 〉
□ 本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。〇〇部長にも、皆様への感謝の気持ちをどうぞよろしくお伝えください。
□ この度は、プロジェクト完遂にご尽力いただき、心より感謝申し上げます。貴社チームの皆様にも、重ねてよろしくお伝えください。
● 挨拶として
特に具体的な用件がなくても、共通の知り合いや関係者への気遣いを示す挨拶として使われます。ビジネスメールの結びにも最適です。
〈 例文 〉
□ 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。〇〇様にも、お変わりなくお過ごしくださいとよろしくお伝えください。
□ 〇〇さんはお元気でしょうか?機会があればぜひまたお会いしたいです。どうぞよろしくお伝えください。
● 謝罪の気持ちを伝える場合
やむを得ず迷惑をかけてしまった際、その場にいない関係者へのお詫びの気持ちを伝える際に用います。
〈 例文 〉
□ 急な体調不良により、本日の会議を欠席することになり大変申し訳ございません。ご参加の皆様にも、くれぐれもよろしくお伝えくださいますようお願いいたします。
□ この度は、納期遅延でご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。関係部署の皆様にも、お詫びの意をよろしくお伝えください。
「よろしくお伝えください」を使うときの注意点
「よろしくお伝えください」は便利な表現ですが、使う相手や状況によっては失礼にあたる場合があります。効果的に使うために、以下の点に注意しましょう。
1: 伝言を依頼する相手・伝えてほしい相手の関係性に注意
目の前にいる相手よりも、伝えてほしい第三者が同等か目上の立場である場合に「よろしくお伝えください」を使うのが適切です。取引先の部長に「〇〇社長にもどうぞよろしくお伝えください。」と部長から社長への伝言依頼は問題ありませんが、取引先の部長に「〇〇課長にもよろしくお伝えください。」と、部長から課長への伝言を依頼するのは不適切です。目の前にいる人が目上なのに、その方より下の立場の人物への伝言を依頼すると、相手に「なぜ私が部下に伝言を頼まれなければならないのか」という不快感を与えてしまう可能性があります。
2: 目上の人への使用は慎重に
「よろしくお伝えください」は丁寧な表現ではありますが、直接の会話相手が極めて目上の人物の場合、その方への伝言依頼は避けるのが賢明です。 本来、目上の方には直接挨拶することがマナーとされており、伝言を頼むこと自体が失礼と捉えられる可能性があります。ただし、家族ぐるみでの付き合いがある場合など、親しい間柄の目上の方の家族への気遣いとして「ご家族の皆様にもどうぞよろしくお伝えください。」と使うのは問題ありません。
3: より丁寧な表現で配慮を示す
「よろしくお伝えください」は汎用的な表現ですが、とくに丁寧さを強調したい場合や、伝言を押し付ける印象を和らげたい場合は「何卒よろしくお伝えください」や「どうぞよろしくお伝えくださいませ」、「よろしくお伝えいただけますか」や「よろしくお伝えいただければ幸いです(幸いでございます)」というような表現を使うと良いでしょう。
4: 伝えたいメッセージを明確にする
「よろしくお伝えください」だけでは、相手が「具体的に何を伝えればいいのだろう?」と迷う可能性があります。本当に伝えたい内容がある場合は、「先日の資料についてお礼を申し上げていると、よろしくお伝えください」と、伝えたい内容を簡潔に付け加えることで、より確実に意図を伝えることができます。ただし、長すぎる伝言は相手の負担になるため、要点を絞って簡潔に伝えることを心がけましょう。
5: 意図を正確に伝えたい場合は直接連絡も検討する
「よろしくお伝えください」は社交辞令としても使われますが、本当に重要なメッセージや、自身の気持ちを正確に伝えたい場合は、この言葉に頼りきらず、自身からも直接連絡を取ることを検討しましょう。 伝言は、あくまで補助的な手段と考えるのが適切です。
「よろしくお伝えください」の言い換え表現
「よろしくお伝えください」は多様な場面で使える便利な表現ですが、いつも同じ表現ばかりだと単調に感じられることもあるかもしれません。状況や伝えたいニュアンスに合わせて他の言葉を選ぶことで、より洗練された印象を与えたり、意図を明確に伝えることができます。
以下に「よろしくお伝えください」の代表的な言い換え表現と、ビジネスシーンでの具体的な例文をご紹介します。
1. よろしくお伝え願います
「願います」を使うことで、より丁寧でかしこまった依頼の形になります。主にメールや書面などのフォーマルな場面で用いられます。
〈 例文 〉
□ 〇〇様へ、深謝の意をよろしくお伝え願います。
□ 貴社ご一同様に、どうぞよろしくお伝え願います。
2. お伝えくださると幸いです
「~くださると幸いです」は、「~していただけるとありがたい」という、より柔らかく控えめな依頼のニュアンスを含みます。相手への配慮を示す丁寧な表現です。
〈 例文 〉
□ 〇〇様に、ご検討くださると幸いですとお伝えください。
□ 〇〇様へ、資料の確認をお願いくださると幸いです。
3. よろしくお言付けください
「お言付け(おことづけ)ください」は「お伝えください」と同様に伝言を依頼する意味ですが、やや古風で、より丁寧な印象を与えることがあります。
〈 例文 〉
□ 〇〇部長にも、くれぐれもよろしくお言付けくださいませ。
□ 〇〇様へ、ご無沙汰しておりますとよろしくお言付けください。
4. よしなにお伝えください
「よしなに」は「よろしく」と同様に「良いように」「適当に」という意味ですが、より古風で洗練された印象を与えます。特に年配の方や、改まった場面で使うと良いでしょう。
〈 例文 〉
□ 〇〇様には、どうぞよしなにお伝えください。
□ 〇〇部長に、よしなにお取り計らい願いますとお伝えください。
「よろしくお伝えください」の正しい意味や適切な使い方、目上の人への配慮について、言い換え表現を例文を交えて詳しく解説しました。「よろしくお伝えください」は、その場にいない方への気遣いを示す、人との縁をつなぐ大切な言葉です。
ただし、使う相手との関係性や、伝えたい内容を明確にすることが重要です。状況によっては「よろしくお伝え願います」「お伝えくださると幸いです」といった、より丁寧な言い換え表現を状況に応じて使い分けることで、単に「伝えてください」と言うよりも丁寧さと敬意を伝えられます。「よろしくお伝えください」や言い換え表現を適切に使うことで、ビジネスにおける円滑なコミュニケーションと良好な人間関係の構築に役立ちます。