上司や目上の人に「お先に失礼します」は失礼?使い方や言い換え表現を解説

仕事を終えてオフィスを後にする際、毎日何気なく使っている「お先に失礼します」という言葉は、使い方を誤ると思わぬ誤解を招く可能性もあります。今回は、ビジネスシーンに欠かせないこのフレーズの使い方から注意ポイント、言い換え表現など、例文もあわせてご紹介します。言葉の選び方をアップデートして、周囲とのコミュニケーションをより円滑にしましょう。

「お先に失礼します」の意味

「お先に失礼します」は、「お先に」と「失礼します」が組み合わさった敬語表現です。

「あなたよりも先にこの場を去ることを、失礼ながらお許しください」という、相手への深い配慮と気遣いが込められた言葉になります。単に「帰ります」という事実を伝えるだけでなく、まだ仕事をしている周囲を尊重し、礼儀正しく退室を伝えるための、ビジネスシーンに欠かせない表現といえます。


「お先に失礼します」の使い方

「お先に失礼します」という退社時の挨拶は、一日の仕事を締めくくる大切なコミュニケーションです。
上司や周囲の方へ配慮を示しながら、スムーズに退勤するための具体的な使い方について解説します。

1. 上司や目上の人に使うのは失礼?

「お先に失礼します」は、接頭辞の「お」や丁寧語の「ます」が含まれた正しい敬語です。そのため、上司や目上の人に対して使っても決して失礼にはあたりません。 もし、よりフォーマルな印象を与えたい場合や、かなり年次が離れた上席の方に挨拶する場合は「お先に失礼いたします」と謙譲語の「いたす」を組み合わせることで、より一層丁寧でかしこまった響きになります。

2. 挨拶をするタイミング・配慮

基本的には、自分の業務を終えて退勤するタイミングで伝えます。ただし、声をかける相手が電話中であったり、誰かと深刻な相談をしていたりする場合は、無理に声をかけず、タイミングをずらすか軽く会釈をして立ち去るのがスマートでしょう。 また、周囲が非常に忙しそうなときは「何かお手伝いできることはありますか?」と一言添えるだけでも、その後の退社がぐっとスムーズになり、周囲との良好な関係維持につながります。

3. 状況に合わせた声のトーンと言い回し

仕事に集中している人が残っている場合は、大きな声で元気よく挨拶しすぎると、周囲の集中を妨げてしまうこともあるため、少し落ち着いたトーンで伝えるのがよいでしょう。ただ一言添えるだけでなく「お疲れ様でした」や「ありがとうございました」といった感謝の言葉、あるいは「恐れ入りますが」などのクッション言葉と組み合わせることで、より角の立たない、柔らかい印象を与えることができます。

4. 使える場面は退勤時以外にも

「お先に失礼します」はオフィスから帰宅するときだけでなく、外出先から直帰する際の電話連絡や会議、懇親会などを途中で抜ける「中座」のシーンでも活用できます。その際は、軽く理由を添えると、周囲も状況が把握しやすくなり安心感を与えられます。


「お先に失礼します」を使うときの注意点

「お先に失礼します」は便利なフレーズですが、周囲の状況や自分の立場を考えずに使うと、思わぬ誤解を招くことがあります。相手に敬意を伝え、円滑な関係を保つために、以下の4つのポイントに注意しましょう。

1. 自分の業務状況と周囲への配慮

まずは、自分のやるべき業務がすべて完了していることが前提です。やり残しがある状態で帰宅すると、後から周囲に負担をかけ、自身の信頼を損なう恐れがあります。 特に忙しい時間帯や、周囲が残業をしている環境では、ただ挨拶するだけでなく「何かお手伝いできることはありますか?」と一言確認しましょう。新入社員など経験の浅い方は、念のため上司に帰宅しても問題ないか確認してから挨拶すると、より誠実な印象を与えます。

2. 「お疲れ様です」との使い分け

退勤する側が使う基本の言葉は「お先に失礼します」です。よく混同されますが、「お疲れ様です」は本来、残る側が先に帰る人へかける「ねぎらいの言葉」です。 もちろん、職場の文化によっては「お疲れ様です」を帰宅の挨拶として併用する場合もあります。基本的には職場の雰囲気に合わせつつ、目上の方に対しては「お先に失礼します」と切り出すのが丁寧です。

3. 略しすぎに注意

親しい同僚や後輩に対して、つい「お先!」「お疲れ!」と略してしまう場合は注意が必要です。オフィスには他にも多くの人がいます。周囲に上司や取引先がいる場で略した言い方をしてしまうと軽い印象を与えかねません。どのような相手であっても、職場では「お先に失礼します」と略さずに伝えるのがよいでしょう。

4. 言葉に「気持ち」を添える工夫

挨拶を単なる「退勤の合図」として事務的に済ませないことも大切です。この一言は、まだ業務を続けている方々への敬意と、一日のサポートに対する感謝を伝える貴重な機会でもあります。一日の感謝を込めて「本日はありがとうございました」と言い添えたり、チームで動いている場合は「明日の資料は、デスクに準備しておきました」といった一言を添えることで、自分のことだけでなく周囲の状況も考えられる人だという、責任感のある誠実な印象が強まります。


「お先に失礼します」の言い換え表現

場面や相手との距離感に合わせてこれらの表現を使い分けることで、より洗練された印象を与えることができます。

1. お先に失礼させていただきます

「させていただく」という表現を用いることで、相手の許しを得て退席するという謙虚な姿勢を示すことができます。「失礼します」よりも丁寧で、上司に対して許可を得てから席を立つというニュアンスを強めたいときに最適です。
〈 例文 〉
□ 本日の目標を達成しましたので、お先に失礼させていただきます。お疲れ様でした。
□ 体調が優れないため、上司の許可をいただき、お先に失礼させていただきます。

2. お先に申し訳ございませんが、本日は失礼いたします

単に帰宅を告げるだけでなく、先に帰ることへの「お詫び」を添えた非常に丁寧な表現です。取引先との会合や、周囲が多忙な中で自分だけが先に退社しなければならない場面など、特に配慮が必要なシーンで有効です。
〈 例文 〉
□ お先に申し訳ございませんが、本日は失礼いたします。残りの作業は明日早急に対応いたします。
□ 会議の途中でお先に申し訳ございませんが、本日は失礼いたします。後ほど議事録を確認します。

3. お先に上がらせていただきます

「上がる」という言葉には「仕事を終える」という意味が含まれています。少しカジュアルなニュアンスがあるため、フランクな職場環境や親しい上司・同僚に対して、一日の終わりの挨拶として使うのが一般的です。
〈 例文 〉
□ 定時を過ぎましたので、お先に上がらせていただきます。明日の会議もよろしくお願いいたします。
□ 本日は特に急ぎの案件もございませんので、お先に上がらせていただきます。

4. お先にお暇させていただきます

「お暇(おいとま)」は、訪問先から退出することを意味する言葉です。自社オフィスで使うのではなく、取引先を辞去する際や、フォーマルな会食・懇親会を途中で抜ける際などに使うのがマナーとして適切です。
〈 例文 〉
□ 本日は貴重なお時間をありがとうございました。それでは、お先にお暇させていただきます。
□ 大変、名残惜しいのですが、次の予定がございますので、お先にお暇させていただきます。

5. お先に帰らせていただきます

「帰る」という言葉を使い、これから帰宅することをはっきりと伝える表現です。早退しなければならない時など、周囲に対して「これから現場を離れて自宅へ戻る」という意思を明確に示す必要がある場面で役立ちます。
〈 例文 〉
□ 私用により、本日はお先に帰らせていただきます。ご不便をおかけしますがよろしくお願いします。
□ 病院の予約がございますので、本日は少し早めにお先に帰らせていただきます。





「お先に失礼します」は、毎日のように交わされる言葉だからこそ、その一言に相手への思いやりや気遣いが表れます。
上司や目上の人に使える敬語ですが、義務的な作業として口にするのではなく、一日の区切りとしての感謝や、オフィスに残る方への敬意を込めて伝えることが大切です。毎日の決まり文句に終わらせず、その時の状況に寄り添った言葉を意識し、丁寧な挨拶を習慣化することで、円滑な職場環境を築く鍵となります。最後の一声まで大切にすることで、自分も周囲の人も、共に晴れやかな気持ちで退勤の時間を迎えられます。 自分も周囲も、気持ちよく一日を締めくくりましょう。



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